「お日にちの方は○月○日の××時、院長先生のご予約でよろしかったでしょうか?」
歯科医院でよくある会話ですね。でもちょっと待ってください。この短い会話の中には3つも間違った敬語が使われています。どこだかわかりますか?
相手がきちんとした敬語を使える人だったら、もしかしたらこういう思いが頭をよぎるかもしれません。「この人たちに自分の体を預けて大丈夫なんだろうか…?」
たかが敬語、されど敬語。『スタッフがいつも「変な敬語」をつかっているのに、院長先生も特に注意をしないようだ…。』このように、スタッフの敬語がおかしいと、医院そのものが疑いの目を掛けられることになります。
この4月、学校を卒業したての新人が入った医院も多いことでしょう。もちろん、ベテランだって安心できません。そこで、間違いやすい敬語を10例ピックアップ。今すぐスタッフ全員でチェック!最後に敬語一覧表の付録も付いてます!
問1. 佐藤様でございますね
問2. 保険証と診察券の方をお出しください
問3. お手洗いはあちらになります
問4. こちらにお座りになってください
問5. すぐに先生がいらっしゃいます
問6. 1時間ほど食事はお召し上がりになられないでください
問7. この資料を拝見なさってください
問8. 1000円になります
問9. 1万円からお預かりいたします
問10. こちらの歯みがき粉でよろしかったでしょうか?
では答えを見ていきましょう!
【問1】
誤)佐藤様でございますね
↓
正)佐藤様でいらっしゃいますね
- 「ございます」は丁寧語ではありますが尊敬語ではないので、患者さん(お客様)の名前につけるのは間違い。スタッフの名前に「鈴木でございますね、少々お待ちくださいませ」などと使うのはOK!
【問2】
誤)保険証と診察券の方をお出しください
↓
正)保険証と診察券をお出しください
- 「~方」は、複数のものから一つを指す言葉。よくある間違いなので注意してください。
【問3】
誤)お手洗いはあちらになります
↓
正)お手洗いはあちらでございます
- 「なります」は、「これからそうなります」という意味の表現方法。「あちらはこれからお手洗いになります」と言っていることになります。
【問4】
誤)こちらにお座りになってください
↓
正)こちらにおかけください
- 「お座りに…」は「座る」の尊敬語なので間違いではありませんが、人によっては犬に対する「おすわり!」を言われている気分になるようです。「おかけください」が無難です。
【問5】
誤)すぐに先生がいらっしゃいます
↓
正)すぐに医師の鶴岡が参ります
- 「いらっしゃいます」は尊敬語です。ここでは主語が「先生」なので、正しくは謙譲語である「参ります」を使います。
- また、「先生」という言葉自体が尊敬表現です。つまり、患者さんの前で身内を「先生」と呼ぶのは本来は間違い。正しくは「院長」「医師」「ドクター」と呼ぶのが正解です。ただし、患者さんに対して「先生」と表現することが古くから広く浸透しており、違和感も少ないので、スタッフが「先生」と呼んでもでも間違いではないとされている場合があります。
【問6】
誤)1時間ほど食事はお召し上がりになられないでください
↓
正)1時間ほど食事は召し上がらないでください
- 「召し上がる」ですでに尊敬語。「お」がつき、「なられる」がつき…二重、三重の尊敬語になっています。
【問7】
誤)この資料を拝見なさってください
↓
正)こちらの資料をご覧ください
- 「拝見」は「見る」の謙譲語ですので明らかに間違いです。「見る」動作をする患者さんがへりくだってしまっています。正しくは尊敬語の「ご覧ください」です。
【問8】
誤)1000円になります
↓
正)1000円頂戴します
- 例3と同様のまちがい。1000円にはなれませんね。とても恥ずかしい間違いですので、十分注意を。
【問9】
誤)1万円からお預かりいたします
↓
正)1万円お預かりいたします
- 有名ないわゆる「コンビニ敬語」です。さすがに歯科医院ではもう使っていないと思いたいですが、先生の医院ではいかがでしょうか?
【問10】
誤)こちらの歯みがき粉でよろしかったでしょうか?
↓
正)こちらの歯みがき粉でよろしいでしょうか?
- 現在の確認事項に「よろしかった」という過去形は不適切です。飲食店などでも「コーヒーでよろしかったでしょうか?」といった間違いをよく耳にしますが、こちらもまたとても恥ずかしい間違いですので十分に気をつけましょう。
さて、ここまでご覧いただけば、冒頭の3つの間違いもお分かりですね。
誤)「お日にちの方は○月○日の××時、院長先生のご予約でよろしかったでしょうか?」
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正)「お日にちは○月○日の××時、院長の鶴岡のご予約でよろしいでしょうか」
- 「~の方」→「の方」は、どちらか一方を指し示す言葉なので、適切ではない。
- 「院長先生」→院長はスタッフにとっては目上の人ですが、患者さんは医院にとってはお客様。「院長の○○」が正解。
- 「よろしかったでしょうか」→今、確認しているのに、過去形はおかしい。
また、ラフな言葉づかいでの会話は患者さんにとっては非常に聞き苦しいもの。スタッフ同士どんなに仲がよくても、勤務中はお互い敬語で話すのが原則です。
最後に医院で使われやすい敬語の一覧表をダウンロードできるようにしておきました(会員のみ)。すぐに覚えるのは大変ですから、これをプリントアウトして医局にはり、迷ったらその都度確認するようにしましょう!
2015年4月8日 09時38分