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2015年版 CT複合機スペック比較(前編)

ほんの数年前までは、CTのある歯科医院はかなり限定的でした。しかし近年、各社より続々とCT・パノラマ複合機が発売され、選択肢も今では30機種以上。価格面や性能面は以前より向上しており、導入や買い替えを検討中の先生も多いはず。そこで今回から2回にわたり比較項目のポイントについて解説、第3回でスペック比較表を公開予定です。第1回の今回は、CTの画質(濃度分解能・空間分解能)とFOVについて解説します。

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前回の比較記事(2012年)から3年の間に、各社より次々とCT・パノラマ複合機が発売され、メジャーなメーカーのHP上だけでも今や20以上のシリーズ(モデル違いを含めると30以上の機種)がラインナップされています。
 

これだけ選択肢が多いと機種選びも難しく、つきあいのあるメーカーや営業マンの人柄で選んでしまうことも多いでしょう。どの機種も歯科用CBCT(コーンビームCT)の登場当時より改良が加えられ、画質などの性能面はもちろん、価格面でも向上してきたと言えます。
 

しかし各機種の仕様をよく調べてみると、それぞれに特徴があり、価格の違いはもちろん、得意・不得意な分野もあれば他には無いオンリーワンの機能を有するものもあります。撮影範囲、画質、被曝量、拡張性、価格…何に重きを置くのかで、機種の評価は大きく異なります。
  

そこで今回から、まずはスペック比較表の概要と、CT複合機を比較する際のポイントについてポジデン的視点で2回に分けて解説。メーカーへの聞き取り調査を行った上で、第3回にスペック比較表を公開予定です。先生の治療分野や用途・目的に沿った機種を選択するための手助けになればと考えています。
 
 
  

スペック比較表の概要

超音波スケーラーのスペック比較記事を既にお読みいただいた先生は、なんとなくイメージが湧いているかと思いますが、今回も下記のような比較表を作成中。第3回目で公開予定です!
  



(クリックで拡大)

 

 

1. FOV(有効視野) 9. X線コリメーション
2. ボクセルサイズ 10. 撮影時間(X線照射時間)
3. 濃度階調bit数 11. アーティファクト低減・除去
4. ラインペアとMTF 12. 撮影姿勢・頭部固定
5. FOVを広げる工夫 13. センサー自動切替
6. 被曝線量(実効線量) 14. 拡張性
7. X線照射方式(パルス・連続) 15. CT値出力
8. スキャン範囲(360度/180度) 16. DICOMサポート

   

調査項目は数多いですが、このうち上記の項目はポジデン的視点で特にチェックして頂きたい項目です。これらについては、本記事と次回で解説していきたいと思います。
 

なお、各項目の解説は「ポイント」と「詳細」に分けて記載しています。お時間の無い先生は詳細(グレー背景部分)を飛ばしてお読みいただけるようになっています!
 
 
 

画質の良さを判断するポイント
まずは「ボクセルサイズ」と「濃度階調数」をチェック!


 
©RF Co.,Ltd.
 

どれだけ鮮明で詳細な画像を得られるか、つまり歯科用CTでの画質は主に「ボクセルサイズ(解像度)」「濃度階調数」から判断することができます。画質を決定づける要素は様々ですが、スペックを検討する際にまずはこの2つを確認しましょう。「ボクセルサイズ」は値が小さいほど、「濃度階調数」は値が大きいほど高画質です。
 
 

(TIPS)「空間分解能」と「コントラスト分解能」
 

CTの画質は、一般的には「空間分解能」と「コントラスト分解能」で評価されます。
 

「空間分解能」とは「高コントラスト分解能」とも呼ばれ、X線吸収係数差が大きい組織間でどれだけ小さいものまで区別して見えるかを評価する指標です。CTのカタログでは主に、解像度(ボクセルサイズ)とMTF(空間周波数別コントラスト特性)で空間分解能が示されています。
 

「コントラスト分解能」は「濃度分解能」「密度分解能」「低コントラスト分解能」とも呼ばれ、X線吸収係数差の低い組織間でどれだけ小さなコントラスト差、すなわちCT値差を識別できるかを評価する指標です。X線出力(管電圧・管電流)や検出効率、ノイズなどが主に影響しますが、歯科用CTは骨や上顎骨、下顎骨などの硬くコントラスト比の高い被写体を撮影することが主で、軟組織などのコントラスト比の低い対象には不向きです。そのため、歯科用CTのカタログ上では濃度階調についてのみ記載しているものがほとんどです。
 

 
 
 

ボクセルサイズが小さいほど画像が細かい!


 
©THE YOSHIDA DENTAL MFG.co.,LTD.
 

CTの解像度は体積素(ボクセル)が小さいほど高く、この体積素は撮影スライス厚が細かい程小さくなります。カタログでは「スライス厚(ピッチ)」や「ボクセルサイズ」で表されていて、この値が細かい程高精細な画像が得られます。
 

ボクセルサイズ(スライス厚)は多くの機種で0.1mm前後ですが、最新機種では0.068mmのボクセルサイズを実現しているものもあります。ただし一般的に、広範囲を撮影するとスライス厚(ボクセルサイズ)は大きくなります(後述)。小さな撮影範囲の場合には高精細でも、広い範囲では画質が低下する機種もあるので、撮影範囲(FOV)とボクセルサイズは合わせて確認が必要です。
 
 
 

濃度階調数が大きいほど、画像をなめらかに表現できる!


 
©ct-tekijyuku.net. 
 

濃度階調数とは簡単に言うと、真白~真黒を何段階のグラデーションで分割し表現するかということで、濃度階調の値が大きいほど滑らかな画像になります。たとえば上の画像は256階調(左)と4階調(右)を比較したものですが、
階調が少ないとコントラストの差を十分に表現できず粗い画像になります。
 

カタログではビット数(bit)または階調数で表され、近年販売されている機種では14~16ビットのものが多いです。たった2ビットの差ですが、14ビットは16,384階調、16ビットは65,535階調になるので大きな差があります。
 

またCT画像の濃度階調数だけでなく、デジタル画像を表示するモニタ側の性能にも注意が必要です。一般的なカラーモニタはもちろん、医療用モノクロモニタであっても16ビットをフルに表示できるものはありませんので、DICOM規格にあわせるなどモニタ側の濃度階調調整(キャリブレーション)を行うことも重要です。
 
 

(TIPS)「濃度階調数」と「ダイナミックレンジ」
 

「コントラスト分解能」の指標には「濃度階調数」のほかに「ダイナミックレンジ」があります。ビット数で表される場合もあるため濃度階調数と同意に用いられる場合もありますが、本来「ダイナミックレンジ」とは、「一度に識別可能なシグナルの最大値と最小値の比」を表します。
 

たとえば一般的なカメラで撮影をする際、人物【弱いシグナル】は映るのに明るい背景【強いシグナル】が白く飛んでしまう事(逆に人物が黒く潰れて背景が映る)があります。これはダイナミックレンジの狭さによりシグナルが飽和してしまうためで、広いダイナミックレンジがあると暗い部分と明るい部分を両方とも白飛び・黒潰れすることなく1枚の写真に収めることができます。
 


 
©General Electric Company, doing business as GE Healthcare
 

CT撮影においても同様に、ダイナミックレンジが狭いと範囲を超えたシグナルが飽和して識別できなくなります。たとえば100のダイナミックレンジで200や300のシグナルを検出する場合、見た目上は100・200・300のどれもが同じシグナルに見えてしまいます(上図左)。

 
 
 

1mmあたりのラインペア数が多いほどボケの少ないシャープな画像に!


 

ボクセルサイズと濃度階調数の他に、画質の指標として「ラインペア」があります。白黒の線を1本ずつあわせて1ペアとして、1mmあたりに何ペアまで識別できるかの性能を表すのがラインペア(lp/mm)です。すべての器械でそのスペックが公開されているわけではありませんが、公開されている場合は画質を判断する要素になります。
 


 
©Thorlabs, Inc.
 

一般的に、どこまで細かいラインペアを読み取れるかの計測は、短形波チャートと呼ばれる「物差し」を用いて行います。(わかりやすいので上図は顕微鏡用のチャートです。ちなみにX線用に販売されているチャートはこちら)。このようなチャートを撮影してみて1mmあたりにより多くのラインペアを識別できるほど、分解能が高くクリアな画質と言えます。
 


 

どんなに優れたセンサーであっても、X線の照射で得られた信号を画像として出力するまでの間に情報が劣化します。逆に、センサー性能がそれほどでなくても、画像出力の技術が高ければ、優れたセンサーのものと変わらない画質ということもありえます。そこで、実際に基準となる画像を撮影して、その鮮明度で性能を表現したものが「ラインペア」です。
 

撮影したもので細かい信号になればなるほど、劣化(ボケやノイズ)の影響が強く出ます。画像処理やセンサーの性能によって劣化の程度には差があり、例えば上図のように、同じものを撮影しても性能が良い場合(左)悪い場合(右)でこのように差がでます。右の画像では、細かいラインペアのコントラストが失われ判別ができていませんね。
 

ラインペアの値が大きい事は、1mmの範囲により多くの情報が読み取れるということで、ボケやノイズの影響が少なく、信号本来の鮮明な画像が得られることを意味しています。また、ラインペアはコントラストとあわせて評価することで、客観的な評価が可能になります。詳しくは↓のTIPS内をご覧ください。
 
 

(TIPS)MTFとラインペアの関係

MTF(Modulation Transfer Function)は「空間周波数別コントラスト特性」のことで、鮮鋭度とコントラストの品質を示す指標のひとつです。前述のラインペアはここでは「空間周波数」とも呼ばれ、MTFは周波数毎に物体のコントラストがどのように再現されるかを示します。
 



©Morita Corporation.

MTF100%は、ラインペアをコントラストを失うこと無く再現できていることを意味します。逆に、MTF0%はオリジナルの黒白ラインペアのコントラストが失われ、グレー1色で再現されている事を意味します。特定のラインペア(空間周波数)に対してMTFの値が大きいほど、鮮明度が高く忠実な画像再現が可能です。
 

たとえば上のグラフ(モリタ)では、1lp/mmがMTF50%のコントラスト比で見えるのに対し、2lp/mmでは13%のコントラスト比で再現されています。(縦軸は入力に対するコントラストのレスポンス、横軸は空間周波数)
 

以上のことから、カタログ等で分解能としてラインペアが記載されている場合、それがどの程度のコントラストで再現されているものなのか、他のラインペア数ではどのように見えるのか確認が必要と言えます。
 

なお一般に、MTFを用いて空間分解能を評価する際にはMTF50%やMTF10%の値が用いられます。MTF10%は人間が目視で識別可能な閾値とされています。
 

 
 
  

広範囲を見たいなら大きなFOV!ただし画質と価格に注意!

 
 
©ct-tekijyuku.net. 

  

読影範囲 FOVの直径
部分的に見る場合 4cm
歯列全体(7番まで)を見る場合 8cm
水平埋伏歯(8番まで)を見る場合 10cm
顎関節まで見る場合 14~16cm

 

CT撮影で見る範囲のことをFOV(Field of View:有効視野)と呼び、広範囲を撮影するためには、大きなFOVが必要です。目的別に必要なFOVをまとめたのが上表です。(表と図はCT適塾より引用
 

平均的な歯列最遠心7番までの距離が約8cmということもあり、8cmのFOVを採用している機種は多いです。しかし8cmのFOVでは撮影範囲ギリギリまで前歯部を寄せても、左右8番の根幹部までは入りません。8番の水平埋伏骨まで撮影するには10cmが必要です。また、左右の顎関節までを見たい場合には16cm以上は必要になるようです。
 




 
©ASAHI ROENTGEN Ind.co.,LTD.
   

なお、一般的に(同一のセンサーで)広い範囲を撮影すると空間分解能は低くなります。例えばAlphard Series(朝日レントゲン)では、Φ5.1×H5.1cmのFOVではボクセルサイズが0.1mmと細かいのに対し、Φ19.9×H17.8cmのFOVではボクセルサイズが0.39mmとなってしまい、空間分解能にかなりの差がでます。撮影範囲の大は小を兼ねるとは言えないので、用途に応じた選択が必要です。
 

また、FOVの大きさは基本的にはセンサーの大きさに比例します。センサーは機器の中でも高額な部材のため、大きなFOVを確保しようとすると価格は何百万円も跳ね上がる事に…。例えばPreVista® Uni-3D(京セラメディカル)はFOVの大きさでモデル区分されているので、センサーと価格の関係が分かりやすいです。
  
 
  

しかし一方で、フルマウスに対応した広いFOVを確保しつつも、低価格に抑えた機種もありますよね。センサーの大きさを変えずにFOVを広げる場合、基本的には撮影方法を工夫することで対応しています。また、複数回撮影を行ってソフトウェア処理でつなぎ合わせるものや、FOVの外側のX線データを用いるものもあります。画質や被曝量に影響する場合もありますので、機能の特性について十分に理解した上で活用していただきたいです。以下、FOVを広くするための3つの方法をご紹介します。
 
  

オフセットスキャンでFOVを広くする
センサーの大きさはそのまま、FOVが広くなる!(でも画質に影響)


 
 ©ct-tekijyuku.net. 
 

検出器を正面から横にずらした(オフセット)状態で撮影することで、広いFOVにする機能です。たとえばiCat Revoluxでは、ノーマルスキャンでΦ8cmのFOVを、オフセット時にはΦ12cmのFOVに拡張できます。検出器のサイズはそのままで、大きい検出器のような広いFOV(ノーマルの1.5~1.8倍)で撮影できるため価格を抑えることができます。
  

オフセットスキャンを備えている機種には、X-era Smart 3D F+(ヨシダ)のオーラルモードや、Naomi-CT(アールエフ)の広範囲モード、3D eXam(KaVo)のEFOVモード、Revolux(iCat)等があります。
 

(TIPS)オフセットスキャンの注意点

上の図は、同じ大きさの検出器をノーマルスキャン(左)・オフセットスキャン(右)を示したものです。緑色の円はFOVを意味しており、ノーマルスキャンでは360度どの角度からも均一にX線を受けています。右のオフセットスキャンは検出器をずらしているため、FOV内の箇所でX線を受けられる角度が限定されていますが、360度回転することでFOVの範囲内全てでX線を受けることができます。
 

しかし、正面にセットして360度回転する場合(ノーマルスキャン)と比べると、相対的にX線のデータ量が少ないため画質が低下すると言われています。また、検出器をずらす距離を大きくする程FOVは大きくなりまますが、画質などへの影響も大きくなります。
 

このようにオフセットスキャンはノーマルスキャン時と比較して画質に影響するほか、撮影時間、被曝量などにも差が出る為、用途にあっているか仕様についてよく確認する必要があります。なおカタログの最大FOVの項目には、オフセットスキャン時のFOVも含まれていることが多いので要注意です。
 


 
 

複数回撮影してFOVを合体、大きくする!


 
©THE YOSHIDA DENTAL MFG.co.,LTD.
 

撮影を複数回行い、それらのデータを縫い合わせる(ステッチ)することで大きなFOVにする機能です。水平方向・垂直方向のステッチ機能があります。繰り返しの撮影で時間が長くなるため、撮影中に患者さんが動いてないか、合成エラー等でステッチ位置にずれが生じていないか注意が必要です。
 

ステッチ機能を備えている機種には、X-era Smart 3D F+(ヨシダ)のフュージョン(上下合成・左右合成)、Promax 3D Plus/Mid(ジーシー)のステッチング機能(垂直方向)などがあります。
 
 

FOV範囲外のデータも画像にできる!(画像は若干粗い)


 
©icat.
   

スキャンで得られる画像は、本来はFOVの範囲内のみです。しかしFOVの範囲外についても、部分的に得られるX線データで画像を構成できるのが微小角再構成という機能です。図の上部はノーマルスキャン、下部が微小角再構成でFOVの外側まで画像を構成した場合。本機能はおそらくRevolux(iCat)のみ搭載しています。
  

(TIPS)微小角再構成のしくみ


 
©icat.
 

通常のCT撮影ではFOV内の全ての部位は360度あらゆる方向からのX線を受けています。一方、FOVの外側でもX線の照射範囲内であれば、360度全周のデータではないものの、限られた角度からはX線を受けています。そのX線データを有効活用することで画像を構成ことができるそうです。もちろんFOVの範囲内に比べると画質は粗いですが、下顎8番の接触関係の確認などには使えるようです。 

 
 
 

第2回につづく

第1回は主に画質とFOVについて解説してきました。第2回では、被曝量やアーティファクトに関連する項目、使用上や拡張の利便性について解説します。調査項目や機種のリクエスト、ご意見など、コメント欄にてお待ちしております!(ポジデン会員のみ)
 

【連載】→ 2015年版 歯科用CT複合機スペック比較(中編)
 

 
 
 

 2015年10月9日 20時11分

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この記事に関するコメント

うおちゃん 2015年11月16日 16時21分
当院もCTを検討中で大変参考になっております。比較に入れて欲しいのですが、テレシステムズ製のQRmaster-Revoをお願いします。無名ですが純国産で気になっている一台です。
シーエイチアイ 2015年11月17日 14時22分
コメントありがとうございます。シーエイチアイ岡田です。
テレシステムズのQRmaster-Revoにつきましても、調査対象に追加いたします。
CT値の出力を備えており、精度も高そうな印象です。詳細をぜひヒアリングしたいと思います。
シーエイチアイ 2015年12月21日 17時33分
テレシステムズQRmaster-H/Revoにつきまして、
調査記事を公開いたしました。是非ご覧ください。
http://dentaloupe.jp/posiden/top/rentogen/381/
さんきち 2015年10月21日 09時02分
大変勉強になりました
ヨシダ製のOP300というのも出ていますが調べて頂く予定ありませんか?(当院の第一候補です)
シーエイチアイ 2015年10月22日 11時24分
コメントありがとうございます。シーエイチアイ岡田です。
ヨシダのOP300、調査対象に加えさせて頂きます。
インスツルメンタリウム社のOP300 Maxioが最新モデルに該当するのでしょうか。
低被爆モードや13cm×15cmの広いFOVが魅力的ですね!!

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