© TELESYSTEMS Co., Ltd.
連載記事「2015年版 歯科用CT複合機スペック比較」。
全3回でお送りする予定でしたが、調査していくうちにデータが膨大になりつつあるので、メーカーへのヒアリングで詳細にお伺いできた機種については、「ヒアリング編」として個別に紹介していきたいと思います。
今回はテレシステムズのCT・パノラマ複合機「QRmaster-H/Revo」について、機能と仕様を解説します。スペック比較表を楽しみにお待ち頂いていた先生には申し訳ありませんが、近日公開予定ですので今しばらくお待ちください!
また、調査機種のリクエストを受け付けておりますので、ご希望がございましたら下部コメント欄にご記入ください。(ポジデン会員のみ)
執筆にあたり、株式会社テレシステムズ様に情報と資料をご提供いただきました。何度も根気強くお付き合い下さいました広報担当のF様に、この場を借りてお礼申し上げます。
QRmaster-H/Revo(QRmaster-H/Champ)とは
名称 | QRmaster-H/Revo (QRmaster-H/Champ) | |
定価 | ¥16,000,000 | |
撮影姿勢 | 座位(チェア分離) | |
X線照射方式 | 連続照射 | |
スキャン範囲 | 360度 フルスキャン | |
FOV | Φ5cm×H4.5cm |
Φ9.5cm×H4.5cm Φ9.5cm×H9cm |
ボクセルサイズ | 0.15mm | 0.2mm |
濃度階調度 | 13bit(8,192階調) | |
空間分解能(MTF10%) | 1.91lp/mm 以上(0.15μm時) | |
撮影時間 | CT:18秒(パノラマ:12秒) | |
被曝線量の目安 | - | |
拡張性 | セファロ非対応 |
テレシステムズの「QRmaster-H/Revo」は純国産のパノラマ・CT複合機。
国内では2014年1月に発売。ケーオーデンタル株式会社などの販売代理店での取扱の他、タカラベルモント株式会社から「QRmaster-H/Champ」の名称でOEM販売されています。
定価は最近の実売価格の傾向からすると、中堅~やや高めの設定(1,600万)です。同価格帯ではモリタやKaVoも選択肢に入ってきますが、実際の販売価格は販売元や時期(キャンペーン等)によって異なるとのことでしたので、まずは問い合わせてみる事をお勧めします。
テレシステムズは2011年に世界で初めてQR(フォトンカウンティング)型検出器を搭載した歯科用パノラマX線診断装置「QRmaster-P」を販売した会社で、その優れた画質や被曝の少なさが評価されています。
パノラマ専用機で培った技術は本機種にも引き継がれており、鮮明で高精度のパノラマ画像を得られ、デンタル画像の切り出しも可能です。
CT機能においてはアーチファクトが少なく鮮明な画像、撮影が簡単・正確に行えるスカウト撮影、CT値の出力などが特徴的な機種です。本機種は朝日大学をはじめ、複数の大学機関(歯学部)における臨床評価も経ているので、性能や品質は確かと言えます。
QRmaster-H/RevoのFOVと画質
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
FOV | ボクセルサイズ | ||
① | Φ5cm×H4.5cm | 0.15mm | |
② | Φ9.5cm×H4.5cm | 0.20mm | |
③ | Φ9.5cm×H9cm | 0.20mm |
QRmaster-H/RevoのFOVは3種類。ボクセルサイズは上表のように対応しています。
直径9.5cmの比較的大きなFOVがある為、概ね8番の水平埋伏歯までの撮影が可能です。なお、オフセットスキャン等、FOVをさらに拡張する機能はありません。
>> FOVについて:「2015年版歯科用CT複合機スペック比較(前編)」
位置づけを容易にするスカウト撮影
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
QRmaster-H/Revoにはスカウト撮影と、自動位置調整の機能があります。
スカウト撮影とは、CT撮影の位置を決めるための目印として2D撮影を行う事。スカウト撮影で得られた患者さんの画像上で、撮影エリアや位置を確認しながら決められるので、確実な位置設定が可能です。
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
本機種では「パノラマ」または「2方向(正面と側面)」のスカウト撮影で位置を確認できるだけなく、スカウト画像上で撮影したい位置とFOVを決定するだけで、装置が自動的に決定した位置に移動します。
手動でFOV内に関心領域を正確に収めるには慣れが必要ですが、この機能があればCT撮影の慣れやスキルに関係なく、誰でも簡単確実に関心領域を捉えることができます。その結果、患者さんへの負担を軽減するだけでなく、位置づけの失敗による撮り直しを防ぐことができます。
QRmaster-H/Revoの画質は…?
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
画質については、①のFOVでは1.91lp/mm以上(MTF10%)の空間分解能があります。モリタのCT専用機3DXが2.0lp/mm以上(MTF10%)なので、画像の鮮明さは十分と言えます。また独自の画像再構成技術により、アーチファクトやノイズを低減させ、高画質な画像を得られるとのこと。
>> ラインペア(lp/mm)とMTFについて:「2015年版 CT複合機スペック比較(前編)」
濃度階調度は13bit(8,192階調)。
近年発売の機種の多くが14~16bitである事を考えると控えめな値です。
13bitを採用している理由については、本機の「CT値出力機能」と「画像再構成時間」のバランスが関係しています。
歯科診療で必要とされるCT値(ハンスフィールド値)の範囲をビット表示に変換すると13bitまでであり、それ以上の階調は不要。また、ビット数を上げるとでデータ量は増え、画像再構成に時間がかかります。そこで、13bitを採用することでCT値を活用しつつ、比較的短時間での画像再構成を可能にしているとのことでした。
ちなみにQRmaster-H/RevoはFOVによりますが30~45秒で画像再構成を行います。
(一般的には、画像再構成に2~5分かかる機種が多いです)
>> 濃度階調度についてはこちら:「2015年版 CT複合機スペック比較(前編)」
(TIPS)歯科診療で用いられるCT値(ハンスフィールド値)
一般的にCT値は12bit(4,096階調)または13bit(8,192階調)の範囲で表現される事が多く、13bitの機種では-1,000HU~+7,191HU(計8,192)を表現できます。空気は-1000HU、水が0、とても硬い骨で1000~、金属など非常に硬い部分が2000~3000の値なので、14bit以上のCT値が歯科診療の領域で用いられる事は極めて稀と言えます。
QRmaster-H/Revoのパノラマ撮影
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
パノラマ撮影における画質の良さも、QRmaster-H/Revoの特徴の一つです。
分解能3~4lp/mmの高精細な画像が得られ、デンタル画像への切り出しにも対応しています。(本機種はCT・パノラマの他、デンタルX線撮影の診療報酬区分でも認可を受けています)
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
パノラマ画像の高画質を実現しているのは、国際特許を取得している「3Dオートフォーカス技術」。27mmの広範囲で焦点を合わせる事が可能なので位置づけも容易。場所によってピントが合っていたり外れていたりというパノラマ画像に特有のボケを解消でき、歯列全体に焦点の合ったパノラマ画像を得ることができます。
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
さらにパノラマ画像を3次元空間にマッピングして「パノラマ3D画像」にすることで、角度や距離を正確に計測することが可能。その精度は非常に高く、縦横方向のどこを計測しても実態に近い計測値(±5%以内)を達成しています(大学機関において臨床評価済み)。
QRmaster-H/Revoの被曝線量について
QRmaster-H/Revoは連続照射で360度のフルスキャンによる撮影です。
一般的には、連続照射とフルスキャンの組み合わせは高画質でアーチファクトの少ない画像を得ることができますが、パルス照射やハーフスキャンに比べて被曝線量は高くなります。
被曝線量について具体的な数値は非公表ですが、他社と比較して大きく差がある事は無いとのこと。成人のCT撮影の照射条件(80Kv、6mA、18秒)を考えると、比較的低い照射条件でCT撮影がされていると言えます。また、被曝線量を抑える小児撮影モードもあり、前述のスカウト撮影機能は位置づけの失敗による撮り直し(不要な被曝)を防ぐ意味でも効果的です。
>> 被曝線量についてはこちら:「2015年版 CT複合機スペック比較(中編)」
QRmaster-H/Revoの付属ソフトについて
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
本機種にはCT画像ビューワー「QR Viewer-Gold」が付属します。
画像ビューワーというと画像を見るだけのように聞こえますが、多様な表示モードの他に、計測機能やインプラントシミュレーションなど、ビギナーからエキスパートまで使える機能を豊富に備えているとのこと。機能が多いので一見難しそうですが、各機能のアイコンを先生の好み、または使用頻度に合わせてカスタマイズが可能なので、初めの方でも簡単に使うことができるそうです。
CT値の表示・計測機能も
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
QRmaster-H/Revoは歯科用CTで数少ない、CT値(ハンスフィールド値)を表示できる機種です。医科用CTになるべく近しいCT値が出るように各FOVごとに補正を施しているとのこと。ビューワーでは、選択領域のCT値カラー表示や計測を行うことができ、臨床的な骨質診断に役立てることができます。
>> CT値についてはこちら:「2015年版歯科用CT複合機スペック比較(中編)」
© TELESYSTEMS Co., Ltd.
QRmaster-H/Revoの販売・サポート拠点
販売およびサポートは、東京・名古屋・大阪・福岡の4拠点。
適切にユーザーのサポートを行えるように販売エリアを限定しており、全国販売はしていません。販売エリア外の医院は残念ながら断念せざるを得ませんが、エリア内は「手厚くサポートしよう」という姿勢が表れていますね。
また、リモートサポートも標準装備。
緊急なトラブルにもインターネット経由で素早く対応、診断が行えるとのことです。
QRmaster-H/Revoの総評
◎ 独自技術でパノラマの画質に自信アリ
◎ CT撮影も「スカウト撮影」で位置づけが簡単・正確
◎ アーチファクトが少ない高精細なCT画像
△ 10cm以上の大きなFOVが必要な先生には不向き
△ 販売・サポート拠点が限定的
× セファロ非対応
CTとパノラマの両方で画質に優れ、位置づけも容易な印象。初めてCTを導入される医院でも扱いやすい機種なのではないでしょうか。販売エリアが限定的なので、まずはお近くの営業所をご確認ください。
資料請求・お問い合わせ
2015年12月21日 09時40分この度はリクエストありがとうございました。機種選びのお役に立てれば幸いです。
広報や営業の方には、とても丁寧にご対応いただけました!